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中国大連の開発区のとある印刷工場でお勤め中の 筆者がなんとなくと言いつつもたまに本気出した りしなくもない勢いで書いてみたりする日記。
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次に目が覚めたのは瀋陽に到着した時。午前0時ぐらい。
カーテン越しにちらっと見ただけなのだが、省都だけあって駅も広い感じがする。この時はトイレに行くために通路に下りていた。瀋陽の駅を出たら、服務員に頼んでトイレの鍵を開けてもらった。
こんな時間に瀋陽に着くのであれば、この列車はあまりお薦めできない。バスのほうがもっと速く到着する。
瀋陽を出てからはロングレールではなくなったのか、ガタンゴトンと音がする。
ちょっと暑いので服を脱いでシャツとパンツだけにした。

5時半時頃、目が覚める。
下車駅まで残り一時間。外はまだ暗い。
6時を過ぎたら、だいぶ明るくなってきた。車内にも照明が灯る。
服務員がやってきて切符を返してくれた。そろそろ下車するための荷作りを始める。

6時半頃、目的駅に到着。
デッキを下りてホームに立つ。寒い。-10度はありそうだ。
重い荷物が手に食い込む。寒さと相まって手の感覚が無くなってくる。
やっと駅舎が見え、改札口で切符を渡して外へ出ると、白タクの群れ...。
公共タクシーは一台も無い。
一番多いのはカブ(ホンダの商業用オートバイ)とリアカーを合体させたような三輪タクシー。防寒用に透明なビニールシートで囲われている。
このタイプの乗り物は大連市の庄河でも見られた。運転手一人、乗客二人乗りである。その他は軽自動車の白タク。SUZUKIのアルトが多い。ダイハツの古いシャレードもあった。私と彼女はSUZUKIのリッターカー(車種不明)を選んだ。トランクに荷物を積んでいざ出発。

駅を出るとすぐそこは畑。
しばらく行くと駅前商店街。といっても平屋の店ばかりが並ぶなんとも殺風景な感じだ。商店街を抜けるとあとはひたすら畑。とうぜん冬だから何も作物はない。
橋を渡る時、川が凍っているのを見た。日本の北陸地方に住んでいたことがある。雪国だけあって寒かったが、湖が凍っても川が凍ることは無かった。しかし、吉林は違う。外は-10度。川でも凍ってしまうのだ。
それにしても、運転手は農村の狭い道を時速80kmの猛スピードで走る。カーブなどで視界が悪くてもスピードはそれほど落とさない。対向車が来たらどうするのだろうか?と思っていたら、目の前に突然対向車がっ!何事も無かったかのようにスッと避ける。とは言え、さすがの彼も多少ヒヤッとしたのか、それ以降はカーブの手前ではクラクションを鳴らすようになった。しかし、スピードは緩めない。
それにしてもいつ彼女の村に着くのだろう。もうだいぶ走った気がするのだが。
彼女によれば駅から車で40分ぐらいだそうだ。まだ20分も経っていない。
突然、舗装路が無くなった。むき出しの土の道だ。乾燥しているので土埃が舞い上がる。さすがに車は速度を落とさざるを得ない。こんな未舗装の道を走るのは日本でも山とか畑に行ったときくらいだろう。

本当にこの道で正しいのか?不安な気持ちになる。

1kmぐらい走ったところで、やっと舗装路に戻った。
途中、村を一つ抜けて、しばらく畑の真ん中を走り続けると、対向車でバスを見かけた。マイクロバスをちょっと大きくしたぐらいのバスだったが、吉林行きとなっていた。
やっと村へ到着。村一番の大通り、と言っても、飲食店や雑貨店がいくつか並んでいるだけだが、白タクはクラクションを鳴らして、道の真ん中を歩いている人をけちらして進む。

「あっ、牛だ!あっちはヤギだ!」

でっかい鶏もたくさん居た。
まさしく田舎の風景である。

サファリパーク状態に感動しているうちに、彼女の実家の前に到着。
彼女が料金40元を払ってタクシーを下りたらお母さんにお父さん、おばあちゃんやどういう関係か不明な人多数に出迎えられた。
がっちりした体格のお父さんが重い荷物を持ってくれて、私たちは家の中へ入った。
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上中下段のベッドが向かい合わせに配置されている。つまり6人で一つの区画だ。一つの車両にはこの区画が10ある。つまり6×10=60人が定員ということになる。各区画には一番下にテーブルが一つと、通路側に小さなテーブルと折りたたみの椅子が二つ、そして、お湯の入ったポットが置いてある。
折りたたみの椅子は慣習的に一番上のベッドの人が座るようだ。一番狭い空間にずっと寝ていられるわけはないのだから当然と言えば当然だが...。
中段と下段の別途の人は消灯時間までは下段のベッドに座る。一つのベッドに二人がけだから、かなりゆったりした感じだ。
ポットのお湯は、そのまま飲んだり、お茶をいれたり、カップ麺を作ったりするのに使う。無くなったらデッキのところに行って補給する。
放っておいても各車両の服務員の女性が補給してくれるが、急ぐ時はセルフサービスだ。

私と彼女は通路側の折りたたみ椅子に座りながら、外の景色をぼんやりと眺めていた。列車のスピードは結構速い。時速100km以上は出ている感じだ。かつてこの路線が満州鉄道として運営されていた頃、蒸気機関車のあじあ号は時速100km以上出ることで有名だった。現在は最高スピードで120kmぐらい出るらしいが、日本のように曲がりくねった路線ではなく、常に100km以上出ているので、軽快に感じる。
出発して一時間して瓦房店に着いてしまった。
瓦房店の人には失礼かも知れないが、瓦房店は田舎というイメージがあったので、駅のアナウンスが録音された音声だったのはちょっと意外だった。

瓦房店を出たところで、服務員の女性が切符を回収しに来た。
乗客の切符を預かってどうするのだろう?と思ったら、切符の代わりにクリアファイルに並べて収納された寝台番号の記載されたカードをくれた。なるほど。合理的なシステムだ。切符を預かりファイルすることでどの座席に人がいるか一目瞭然だ。これならキセル乗車はできない。
キセル乗車といえば、中国の鉄道の対策は徹底している。たとえば停車駅が近くなると、トイレは外から鍵をかけて閉鎖される。停車中はトイレを利用できない。
トイレに隠れてのキセル乗車をできないようにしているわけだ。

日本の国鉄と同様、やたらと車内販売がやってくる。
値段はもちろん高い。だから多くの乗客は食べ物や飲み物を持参する。それでも少しでも持ち運ぶ荷物を少なくしたい若者などは、車内販売でビールやつまみなどを買っている。高いと言っても市価の5割増し程度で、元々モノの安い中国であるから、非常識に高いわけではない。

9時になったところで服務員にカーテンを閉められた。そろそろ消灯らしい。
寝る前に用を足さないと、ということでトイレに移動。トイレは各車両にある。中は思った以上に清潔だった。JRの車両と変わらない。
デッキに出るとかなり寒い。外は零下なんだろう。

自分の寝台へ戻る。はしごに足をかけ、一番下のベッドの下に靴を脱いで置く。
上まで慎重に登り、なんとか体を横たえた。目の前にはすぐ天井がある。
さっさと目をつぶり、列車の揺れに体をまかせた。
天井のことさえ忘れてしまえば、列車の揺れは心地よい。まるで優しくマッサージされているみたいだ。たぶんロングレールが敷かれているのだろう。レールのつなぎ目の「ガタンゴトン」という音が全く無い。
もっと激しく揺れるのだろうと思っていただけに、この乗り心地の良さは意外だ。
客車は熱を逃がさない構造になっていて、言い換えれば、密閉されていて、外からの音もしっかり遮断しているので、非常に静かだ。静けさと乗り心地の良さで、消灯の前にそのまま眠りについてしまった。
出発の日は留守の間の仕事を先に片付けなくてはならなくて、とても忙しかった。それでもなんとか仕事を終えて、帰宅。吉林は大連に比べてとても寒いので防寒具を買いに彼女と一緒に天津街へ。
パパにも防寒具をプレゼントするのだと、パパはだいたい私と体格が一緒。なので私が代わりに試着。というわけで二つ防寒具を購入。
急いで家に戻ってシャワーを浴びる。

着替えたら、すぐに大連駅へ出発。
夕方だからなかなかタクシーがつかまらない。
10分も待ってやっとタクシーに乗車。
予定よりも駅に着くのが遅れたけど、その分あまり待たずに列車に乗れそうだ。
待合いホールはたくさんの人でごった返していた。皆大きな荷物を持っている。田舎へのおみやげか、はたまた商売道具か?

10分ほどで改札口に駅員が並ぶ。前回彼女を吉林へ見送った際は女性駅員が並び、ファンファーレと行進の儀式があったが、今回は無い。
電子改札機があるにも関わらず、それは使われていない。たぶん壊れているのだろう。駅員は一枚一枚の切符にハサミを入れている。
切符はプリンタで発行の味気ないものだが、ハサミは本物だ。
階段を下りてホームへと向かう。席は指定席なので急ぐ必要は無いのだが、皆、我先へと急ぐ。ホームに着いたら、目指す寝台車は目の前にあった。

昔の国鉄を彷彿とさせる木製の寝台車。床はリノリウムっぽいが、外見は木製。
日本よりホームが低いので客車は高い位置にある、だからデッキにはステップ(階段)があって、それを登ることになる。お年寄りにはちょっときつい高さだ。
中に入り扉を開けると右手に寝台ベッドがずらりと並んでいる。三段ベッドだ。
ん?三段?てっきり上下二段だと思っていた。上中下ということか。
我々の席は上...。え?あの狭い空間に寝るのか?
車のトランクほどの広さしかない空間に体を滑り込ませて横になる。
試しに寝てみた。横幅は70~80cm程度。一応寝返りはできる。転落防止のロープも張ってある。しかし、目の前20cmのところに天井があって、のしかかってくる感じだ。結構圧迫感がある。これは閉所恐怖症の人には無理だろう。
中下段はまだましだ。座高分の高さはある。つまり座った状態でも頭は天井にぶつからない。上段は座ることすらできないのだ。
彼女が「上段しか空いてない」と言っていた時の困った表情の理由がこれで理解できた。

仕方がない。何事も経験だ。席があるだけ幸せだ。どうせ一晩だけの辛抱だ。寝てしまえばなんとかなるだろう。

(つづく)


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