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中国大連の開発区のとある印刷工場でお勤め中の 筆者がなんとなくと言いつつもたまに本気出した りしなくもない勢いで書いてみたりする日記。
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家の中に入ると、まず玄関らしきスペースがある。
右手には胸の高さ程の大きな「かめ」があり、白菜が漬けられていた。
彼女が先頭になって右手の部屋に案内された。広さは8畳程度。左側は土足スペースで2畳程の広さ。右手は40cm程の高さの床で表面にはビニールのマットが張られていた。

「座ロ巴!(座って!)」

と彼女に言われる。
座布団も無いいかにも冷たそうな床の上に座れというのか?
しかし、他に椅子も見あたらないので、しかたなく床の上に座る。

ん?
暖かいぞ。

こんな農村に温水の床暖房か?
ムムム、いったいどういうことだ?

どうして床が暖かいのか尋ねると仕掛けを見せてくれた。
部屋の右手前には台所がある。台所には私の想像していた中国の通りの、いわゆる「かまど」があった。そして、この「かまど」は左手の部屋の床下とつながっている。つまり、「かまど」で煮炊きをすると、その熱気が部屋の床下にまで伝わるという仕組みだ。
これがいわゆる「オンドル」という代物だ。
ネットで調べたところによると「オンドル」は朝鮮特有の床下暖房設備で、中国東北地方は朝鮮半島に近いことから古くより「朝鮮族」と呼ばれる中国民族の一つが住んでおり、彼らによって「オンドル」の文化が伝えられた、とされている。(実際のところは知らない)
「オンドル」を漢字で書くと「温突」となる。
この「オンドル」のおかげで、外は零下であっても室内は十分に暖かい。生活の知恵である。

朝の7時半。私たちに特別な朝食をごちそうしたいと言われ、お父さんが食材を買
いに行った。ぼーっと寒そうな外を眺めているとまもなくお父さんが戻ってきた。
手には大きな生きた鶏が握られている。

いまから、あの鶏をさばくのだろうか?

農家にとって鶏は卵を産む大切な家畜だ。それを料理として出してくるということは大切な客人をもてなすということだ。
お母さんが私たちの見ていないところで鶏を絞めてきたらしい。しばらくすると茹でられて羽もない白い皮だけの鶏になっていた。
それから包丁を入れ、解体し、煮込む。

30分ほどして、折りたたみのテーブルが作られ、朝食が並べられた。
メインの鳥の煮物と涼菜とキムチ、そしてご飯。完璧なごちそうだ。
おいしくいただきながら、世間話をする。
「大連に比べてこっちは寒い?」「昨夜はよく眠れた?」などなど。
お母さんと彼女のお兄さんのお嫁さんが作ってくれた料理は本当に美味しかった。
デザート代わりだろうか?餡入りの団子があった。さっそく食べてみる。
うぇ、餡が全く甘くない。なんじゃこれは!
お父さんがおもむろにビンを出してきた。
「これをつけて食べるんだよ」
差し出された白い粒上の物体は甘かった。いわゆる砂糖である。
日本の餡はあずきを煮て砂糖で味付けをしてある。中国東北地方では砂糖で味付けはしないらしい。そういえば十五夜のきびだんごも砂糖を付けて食べるではないか。あの風習はおそらく中国が起源なんだろうな...。

朝食が済むと仕事のことが気になりだした。
村にインターネットカフェがあるか?と尋ねると「有る」との答え。
さっそく彼女の従兄弟に連れて行ってもらうことにする。

外に出るといきなり道端に鶏の一団が居た。

すわっ!さっきお仲間を食べてしまった復讐かっ!

と一瞬たじろいだが、その恐れは杞憂に終わった。
道端に落ちている穀物の種らしきものをつついて食べているだけだ。
しかし、中に一羽の妙な雄鳥が居た。
片足が無いのだ。
食べられてしまった?いや、そんなハズはない。
よく見ると歩き出したとき、もう一本の足がちゃんと出てきた。
なるほど、外は零下だ。寒いので、交互に一本足で立っているだけだったのだ。

しばらく歩くと、今度はヤギが居た。
当然のことながら首輪や電柱につながれていることはない。放し飼いだ。
こっちを見るな。結構体格も立派なので、突進されたら、と思うと少し怖い。
ヤギは枯れたトウモロコシの葉っぱをむしゃむしゃと食べていた。

更に歩くと、今度は二頭の牛が居た。
大きい。間近で牛を見るのは子供の時以来だが、大人になった今でも、目の前の牛は十分大きく感じられる。真下に落ちている彼(彼女?)の糞も大きい。立派だ。
彼らもトウモロコシの葉っぱを黙々と食べていた。
外は零下だ。当然彼らの吐く息も白い。目の前にこんなにも大きな生き物が居て、白い息をしている。まさに農村なんだな、という実感。

1kmは歩いたんじゃないか、と思う頃、村のメインストリートに着いた。
ネットカフェの中に入る。ネットカフェと言っても、普通の民家だ。パソコンがずらっと並んでいる。
店主らしき見るからに怪しいおじさんがいた。
彼女の従兄弟がなにやら会話をしている。
しばらくして、彼が店の外に出る。後からついて行くと、今日はネットにつながらないそうだ、と言う。
ネットができない...。予想はしていたものの、大変なところに来てしまったな、という思いが浮かんだ瞬間だった。

仕方が無いので、日本の取引先に電話をする。
彼女の村にはIP電話カードは無いので、普通に国際電話をかけることになる。
一分当たり12元(180円)。日本から中国に電話をかけるのと同じ料金だ。
手短に要件を話し、仕事の件を確認。今のところ何も問題は無いそうだ。

尿意を覚えたので、トイレの場所を訊く。
部屋の窓から見える畑の向こうに木で作られた小さな小屋らしきものがある。
それがトイレだという。
防寒着を着て外に出る。
畑の真ん中であるから、ちと遠い。
間近で見ると、小屋というより、崩壊しかかった木の囲いと言った感じだ。
浅めの穴が掘られ、そこに二枚の板を渡す。板の上に乗り、下の浅い穴に用を足すという具合だ。穴は浅く、いわゆる「物」が間近に見える。
零下のため、凍っており、それほどニオイはひどくはない。
糞尿はオンドルで焚いた薪の灰がかけられ、後に畑の肥料となる。

まさしく農村の暮らしだ。
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